「経験があると知られたら、結婚を断られるのでは」「経験がないことを変に思われたらどうしよう」。相手の言葉やネットの意見を見て、自分を責めてしまうことがあるかもしれません。
この記事では、性経験の有無や人数で、人としての価値や結婚相手としての優劣を決めない立場で考えます。大切にしたいのは、過去の詳細を説明して相手に認めてもらうことより、今の希望や嫌なことを話せるか、互いを尊重できるかです。
話したいこと、まだ話したくないこと、健康や今後の関係のために相談したいことは、分けて考えられます。すぐにすべてを打ち明けることも、相手に合わせて経験を作ることも、この記事から勧めるものではありません。
この記事の要点
- 経験の有無だけから、誠実さや愛情、結婚生活の良し悪しは決めない。
- 過去の詳細と、今の同意・健康・将来の希望を分けて話す。
- 答えたくない質問には、話す範囲や会話を止める希望を伝えられる。
- 怖さや強制がある場合は、相手を説得するより安全な相談先を考える。
「経験がある・ない」で、自分を評価しなくてよい
「処女」「非処女」という言葉で分類されると、経験のある自分は大切にされないのか、経験がない自分は未熟なのかと、どちらにも不安が向くことがあります。この記事では、こうした呼び方を人の評価語として使いません。
経験に至った事情も、経験を持たない事情も人それぞれです。交際の長さ、関心、体調、価値観、望んだこと・望まなかったことなどを、一つのラベルで説明することはできません。恋愛経験と性経験も、同じものではありません。
結婚について考えるときには、困ったときに相談できるか、断ったことを尊重してもらえるか、暮らしの役割を一緒に考えられるかなど、今の関係の中で確かめられることがあります。経験を理由に自分の希望を小さくするより、どんな関係を続けたいかを言葉にしてみてください。
相手が個人的な不安や価値観を持っていることと、あなたを侮辱したり、証明を求めたりすることは分けて考えられます。相手の不安を理解しようとしても、自分が傷つく扱いまで引き受ける必要はありません。
体の見た目から性経験を証明しようとしない
WHOは2018年の国連機関共同の呼びかけで、いわゆる「処女性検査」に科学的根拠がなく、処女膜などの外観を調べる方法では性交経験を証明できないと説明しています。「処女性」は医学的・科学的な用語ではないともしています。
このことから個人の健康状態を判断するのではなく、外見や検査で過去を証明するという考え方と、必要な医療相談を分けてください。相手に疑われたために、自分の価値を示す検査を探す必要はありません。
出典:WHO「処女性検査の廃止を求める国連機関の声明」(2018年10月17日)。性経験の証明についての資料で、個人の診断や妊娠・感染症の検査方法を説明するものではありません。
痛み、体調、妊娠や感染症への心配がある場合は、経験を証明するためではなく、自分の健康について医療機関へ相談してください。恋人への説明と、診察で必要な情報を医療者と話すことも、同じ範囲にする必要はありません。
過去を話す前に分けて考えたい3つのこと
1. 過去の詳しい出来事や人数
昔の相手の名前、回数、具体的な行為などを、結婚への誠実さの証明として一括して話すことを、この記事から勧めるものではありません。話したい場合も、どこまで共有したいかを先に考えられます。
相手が気になると言ったときは、「何が不安なのか」を聞く方法があります。比較されるのが怖いのか、今の健康を心配しているのかで、話す対象は変わります。すべての詳細を聞くことが、その不安に必要なのかも分けて考えてみてください。
2. 今の二人の同意と、望む関わり方
過去に経験があることは、今の相手との行為や、これからの行為に同意したことを意味しません。経験がなくても、ある場合でも、したくないことや待ってほしいことは、そのときの希望として伝えられます。
結婚を考えている、すでに夫婦である、以前は同意した。そうした事情があっても、今どうしたいかを話すことが大切です。内閣府は、同意のない性的行為は性暴力であり、恋人・夫婦の間でも起こると説明しています。
出典:内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力とは」。一つの行為への同意が、ほかの行為への同意にもなるわけではないことなどが説明されています。
3. 今の健康と、これからの生活で相談したいこと
避妊や妊娠への希望、体調、痛みへの配慮など、今後の関係のために相談したいことを整理します。過去の人数を聞くことだけで、現在の健康状態や、相手の望む関わり方がわかるわけではありません。
健康に関する具体的な判断は、医療機関の説明をもとに考えます。相手と話すときも、一方だけが健康管理や費用を引き受ける前提にせず、どんな配慮や協力を望むかを相談してみてください。
表が画面に収まらない場合は横にスクロールできます。キーボードでは表に移動し、左右キーを使います。
| 話題 | 話す目的の例 | 分けておきたいこと |
|---|---|---|
| 過去の詳しい経験 | 自分が共有したい気持ちを伝える | 相手を安心させるための無制限な説明にしない |
| 今の希望や境界 | したくないこと、待ってほしいことを共有する | 過去の経験から今の同意を決めつけない |
| 健康についての心配 | 必要な受診や配慮を相談する | 人柄や価値を判定するための話にしない |
話す範囲を自分で決めるための会話例

一度にすべて話さなければ不誠実だと思うと、準備ができていないことまで説明してしまうかもしれません。まずは、今話したいことと、話すのがつらいことを分けておきましょう。以下は言い方の例で、必ずこの通りに伝える必要はありません。
過去の人数や詳細には答えたくないとき
会話の例
「過去の詳しいことは、今は話したくない。あなたとこれからどう関わりたいかや、安心して過ごすために必要なことなら話したいと思っている」
「答えたくない」と言うことと、事実と違うことを言うことは分けて考えられます。自分の言葉で境界を伝える方法があるか、落ち着いて考えてみてください。ただし、怖くてそう言えない状況では、その場で説明を完結させることを優先しないでください。
経験がないことへの不安を話したいとき
会話の例
「慣れていないことがあって不安です。急がずに、嫌なときや途中でやめたいときも言える関係でいたい」
経験の少なさを埋めるために、したくないことを試したり、相手の希望に一度で応えたりする必要はありません。知らないことを責めずに話せるか、希望を伝えたときにどう対応してくれるかを確かめてください。
過去を話したあとに、繰り返し責められるとき
会話の例
「前に話したことを、言い争いのたびに持ち出されるとつらい。過去を責める話を続けたくない。今の二人の問題を分けて話したい」
一度共有したからといって、いつでも繰り返し問い詰められることを引き受けなくてよいです。言葉で説明しても侮辱や追及が続くなら、話す場所を変える、会話を止める、距離を置くなど、自分が安全に考えられる方法を選んでください。
相手との関係で確かめたい5つのこと
ここで挙げるのは、相手の人格や将来を判定するチェックテストではありません。現在起きていることを整理する観点です。一つ当てはまれば必ず別れる、という基準でもありません。
1. 答えたくないと言った範囲を尊重するか
相手が質問することと、答えるまで追い続けることは違います。「今は話せない」と伝えたあとに、時間を置けるか、別の話題へ移れるかを見てみてください。
反対に、自分も相手の詳しい過去をすべて知ることを求めていないかを考えられます。どちらか一方だけに説明の負担が偏らない関係を望むことはできます。
2. 経験を理由に侮辱したり、人柄を決めつけたりしないか
経験があるから不誠実、経験がないから面倒という決めつけは、本人の考えや今の行動を確かめる話になっていません。傷つく言葉を向けられたときは、それを受けた自分の気持ちも判断材料にしてください。
相手に違う価値観があるとしても、そのために自分を低く扱う必要はありません。考えの違いを話せるのか、傷つく扱いが続くのかを分けてみましょう。
3. 比較や不安を、自分の問題としても話せるか
「昔の相手と比べられそうで不安」という気持ちが出たとき、二人で現在の希望を話すことはできます。ただ、その不安をなくすために、一方が過去を細部まで説明し続ける役割になる必要はありません。
「今、何を大切にしたいか」「どんな言葉なら安心して聞けるか」を話せると、変えられない過去だけを確かめ続ける会話から離れる選択肢が生まれます。
4. 嫌だと言ったことを、行動でも尊重するか
優しい言葉をかけることだけでなく、待ってほしい、やめたいという希望を尊重しているかを確かめます。「結婚するつもりだから」と、その場で応じることを求められていないでしょうか。
怖さや断れない状況がある場合は、相手の気持ちを変えるために自分だけで努力し続けず、信頼できる人や公的な相談先を頼ってください。相談するために、関係に何という名前を付けるかを先に決める必要はありません。
5. 経験以外の暮らしも、対等に考えられるか
結婚を考えるなら、お金、仕事、家事、親族との距離、子どもへの希望など、相談することはほかにもあります。経験の話ばかりで、それ以外の大切な希望を話せなくなっていないかを振り返りましょう。
「経験を受け入れてもらう代わりに、ほかは全部合わせる」という関係にする必要はありません。自分も望む生活を話せるかが、これからを考える材料になります。
自分を責める気持ちが残るときの整理
自分では気にしたくないと思っていても、相手に言われた言葉が残ることがあります。すぐに割り切る、前向きになると自分に課題を増やさず、「どの言葉がつらかったか」「今どんな扱いを望んでいるか」を書いてみる方法があります。
過去に納得して選んだこと、当時は選べなかったこと、今も整理できないことを、一つの「失敗」にまとめないでください。望まなかった行為や被害について、自分の価値が下がったと考える必要はありません。
思い出すだけでつらい場合、相手へ詳しく話す練習をするより、安心して相談できる先を考えてよいです。公的な性暴力の相談先や医療機関など、今の心配に合うところへ相談できます。詳しい支援の案内は、前掲の内閣府のページでも確認できます。
今決めることを小さくするなら、「今日は相手に説明しない」「話したい範囲をメモする」「信頼できる人に、今つらいということだけ伝える」なども選択肢です。相談先に何を話したいかも、自分のペースで考えて構いません。
経験の説明より、尊重される関係を考える
誰もが同じ価値観を持つわけではなく、話し合っても折り合わない希望が見つかることはあるでしょう。そのとき、自分が劣っているからだと結論づける必要はありません。関係を続ける、保留する、距離を置くという選択も含めて考えられます。
性経験の有無だけに結婚の答えを預けず、今の自分の希望や境界を話せるかを確かめてください。相手に認められるために説明し続けることより、二人が互いを尊重できるかという問いを大切にしていきましょう。





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